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政治家が持つべき素質と要件

【正論】希望的観測では首相は務まらぬ 配信元:2010/03/26 09:00

 永田町界隈の風刺話を聞いた。「東京には、正体不明の怪鳥がいる。日本人はサギだと言うが、中国人はカモと見、米国人はチキン、欧州人はアホウドリだと言う。本人はハト(鳩)と言い張っているが、おれは日本のガンだと思う…」と。ワシントンの日本人社会が発信源だとか…。

 ≪「政治哲学」に見逃せぬ誤り≫

 日本政治の迷走の根因は、鳩山由紀夫首相である。小沢一郎幹事長の問題はしばらくおく。首相は、日本を取り巻く国際環境とわが経済力を冷厳に直視できず、適切な軍師の助言も得ていない。それは首相の「私の政治哲学」(『Voice』誌)と就任後の言動から明々白々である。

 鳩山論文は一見理想主義的に見えるが、見逃せぬ重大な誤謬(ごびゅう)が経済と政治の両面にある。経済では、今の金融危機を米国の市場原理主義のせいと論じた。だがそれは一因で、日米の長期不況には他の複雑な要因がある。その論は単純すぎ、反米トーンが強すぎる。

 政治でも、日米同盟は日本外交の基軸だと書きつつ、数年前に主張した「駐留なき安保」を否定しなかった。記者に問われて初めて「封印する」と語った。国際政治の認識不足を自認したのだ。

 論文の末尾に首相は、クーデンホーフカレルギー伯(欧州連合を構想した政治家)を引用して言う。「すべての偉大な歴史的出来事が、ユートピアとして始まり夢に終わるか、現実となるかは、それを信じる人間の数と実行力にかかる」と。

 その通り、正に政治家鳩山に問われるのは実行力である。だが、首相が語ったのは、論文でも記者会見でも、殆(ほとん)ど希望的観測ばかりで、実行の手筈(てはず)や行程表がない。

 ≪現実離れ書生論と弱者思考≫

 論文が現実離れした書生論というだけでなく、首相は就任後も同じ過ちを繰り返している。

 二酸化炭素削減25%を突然、国際約束した。ところが、実現策の論議も突っ込んだ検証も乏しく、今回の温暖化対策法案での具体化はおぼつかない。普天間問題では、八方美人の発言を繰り返すが、他の府県と真剣な交渉も懇請も国民の啓発もしない。米国と交渉もなく5月決着の「覚悟」を語る。これは覚悟ではない。希望的観測にすぎず、実践の苦労を回避する弱者の思考である。

 良き宰相には、持つべき素質と要件がある。管見の及ぶところ、歴史家トインビーが示した4条件が見事である。

 (1)勇気と、国民を奮い立たせる能力がある

 (2)私的偏見がない

 (3)他人の考えや気持ちを敏感にとらえる直感力を持つ

 (4)あくまで確実で限られた目標を追求する

 トインビーは(1)の例に、アタチュルク(トルコ共和国を創設)、チャーチル、ガンジー、ホーチミンを、(2)でトルーマンを挙げ、(4)を論じて言う。「同じ革命家の中でも、(ロシア革命の)トロツキーは幻想家として失敗し、レーニンとスターリンは現実主義者として成功した」と。

 鳩山氏はこの名言の4条件を著しく満たさないが、致命的なのは特に(4)の条件である。それは上述の拙論から明らかであろう。

 ≪自民党は急ぎ「受け皿」を≫

 だが問題は、鳩山首相だけではない。同じ宰相の4要件を過去の首相に適用すれば、どんな採点になるか。ここ数年、自民党の党首・首相の選出も、主要閣僚の選任もひどいものであった。故に民の信を失いお灸をすえられたので、政権交代は良かったのである。

 だが現内閣の実績は、その不慣れに配慮しても、前途に大不安を抱かせる。迷走が続けば、日本政府は内外で信を失い、また軽侮されよう。もしも今、大事件が起れば、現政府は機敏適切に対処できず、国が危殆(きたい)に瀕(ひん)しはしないか。

 この故に、自民党とその同志は現政権の「受け皿」づくりを急いでほしい。具体的には、次の2つが緊急事であろう。

 (1)党首選出の手続改正と実施

 (2)影の内閣の選任

 現行手続は、党首が首相適任者か否かを吟味する工夫がない。候補者の人柄と内政、外交軍事に関する識見をチェックするため、もっと時間をかけ、多数の党員などと内閣の重要課題につき質疑応答せねばならない。その上で、候補者を絞り込む予備選挙をへて、最終的に2人の候補で決選投票をする手続がよい。谷垣禎一総裁は早急に、新選出法を決め、新党首を選出すべきだ。与謝野馨氏、舛添要一氏その他も、新党よりも、各人の政策をひっさげて予備選に出て雌雄を決してほしい。

 次に、責任ある野党として政府の政策の代案を提出することだ。2大政党制は、政策の明白な基本的対立が前提である。自民党には有能な閣僚候補が多い。党首は、すべからく影の内閣をつくり、各省別に現政府の政策に代わる政策案を提示し、国会で論戦すべきである。そうして初めて、国民に政府交代の内容が明らかになり、看板倒れのマニフェスト(政権公約)のごまかしは通らなくなるであろう。(京都大学名誉教授・市村真一)

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